タイガーハート


『あの時…助けてくれた時…

なんで小虎くんなんだろうって思ったの。

諦めることもできないなんて、残酷だと思わない…?』


その言葉に頭が真っ白になる。
俺が、間接的に野並さんをこんなにも苦しめて、傷つけていた。


言葉が出ずに、押し黙っていると、更に彼女は続けた。

『小虎くんが欲しいの。

どうしても欲しいの。


無理だったらさ…っ
私の事、傷つけて…っ』

涙で声がかすれている。
自分の幸せが、こんなにも誰かを傷付けていた。


泣きじゃくる野並さんに歩み寄り、目の前に立つ。

野並さんの苦しみが伝染して、胸が潰れるように痛い。

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