タイガーハート

ステージ発表が終わり、前夜祭はあっという間に幕を閉じた。


『にしても、ちょっとドキッとしたよ!』

『小虎って、あんなキャラ!?あまぁーい!』

『わかる!
でもちょっとだけももが羨ましくなったわ!』


教室の中、女子が甲高い声で騒いでいる。

興奮冷めやらぬ中、
クラスメイトの大半が帰路につくことなく、教室で語り合っていた。


机に紙パックのバナナオレが置かれる。
『お疲れ』
隼人は、そう言って笑うと、
目の前の席に腰掛けた。


ベストカップル優勝は逃してしまった

だが、当の本人達にとっては、残念でも何でもない。


そんな事を考えていると、

『小虎くん』

今一番話したくない人の声がした。


「野並さん。なに?」

『一緒にまわらない?明日の文化祭。』
首を傾げると、ショートカットの髪の毛がふわっと揺れた。


「無理だ。委員があるから忙しい」

冷たく突き返すように返事をする。


『…私の事嫌い?』

頭が痛む。

隼人の目の前でこんなやりとりを出来るほど、
頑丈には出来ていない。

彼女の言葉に返事をすることなく、
教室を出た。


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