タイガーハート
「お前は、逃げる必要ない。
俺がどこかに行くから。
伏見は、普通にしてて。」
伏見に歩み寄る。
「ほら、荷物」
『え?』
目を丸くした伏見の荷物を取り上げる。
「ゆっくり戻ってこい。」
言い残し、教室を出る。
潔くないことくらい、わかっている。
伏見を傷つけた俺は、
伏見を好きでいることさえも許されない。
けれど、どんなにあがいても伏見の事が好きで。
伏見の事だけが好きで。
制御ができないんだ。
諦め方を教えて、誰か。
階段を一段ずつ登る度、視界がぼやける。
「伏見…っ」
堪えきれなくなった痛みを吐き出すと、
何かが頬を伝った。