タイガーハート
伏見の方へ目をやる。
その瞬間、胸が潰されるように痛んだ。
すごく辛そうな顔。
今にも泣き出しそうだ。
伏見が苦しんでいるのはきっと、
俺の事だけじゃない。
誰より友達を大切に想う伏見。
こんなに辛い事はない。
その顔を見るなり、言葉が勝手に口をついた。
「…した。
ね、野並さん」
野並さんを見つめる。
彼女は訝しげに俺を見つめ返す。
「ガキかよ」
は、と嘲笑する。
「キスくらいで勘違いすんなよ。
お前の事なんて、これっぽっちも好きじゃねぇよ」
野並さんから視線を外さずに言い捨てる。