タイガーハート
こんなに些細なことで不満が芽生えるなんて、自分らしくなく、戸惑う。
そんなことを考えながらステージの下、引き出し式の収納庫からパイプ椅子を取り出しては並べ、の繰り返し。
男と違い、女子には重労働らしく、周りを見ると少しずつ動きが鈍くなってきている。
考えを振り切るようにより一層体を動かした。
パイプ椅子を取りに、ステージの前を横切ろうとすると、ステージ横の階段を降りた伏見が声をかけてくる。
『小虎っ!』
「何?」
先ほどの光景が浮かんで、ついそっけなくしてしまう。
『え?何?…怒ってるの?』
「別に。
それより、今忙しい。」
目を逸らすと、伏見がこちらに手を伸ばしてくる。
『えっ、ちょっと、小虎…?』