タイガーハート
体育館の裏口からステージ袖へ入る。
すると、ステージ脇の幕に隠れて、
客席を凝視したまま固まっている伏見の姿があった。
その手にはマイクを握りしめている。
そっと伏見の方へ歩み寄る。
「伏見」
囁くようなトーンで背後から声をかけると、
『きゃあ!』
びくっと肩を揺らして悲鳴を上げる。
ステージ袖にいる沢山の人の視線が一斉に集まる。
やばい、と思い反射的に両手で幕を掴むと伏見を皆の目から隠した。
伏見は幕と、俺の腕の中にすっぽりと閉じ込められる。
「声がでけえ!」
より小さな声で制すと、俺だと気付いたようで、伏見は目を見開く。
『小虎!?け、けがは!?』
俺の包帯を見るなり、それに手を伸し、触れる。
「平気」
触れた手が髪の毛に触れ、何だかくすぐったい気持ちになる。