タイガーハート

皆が壁のように立ちはだかる向こう側、野並さんが見えた。
真っ直ぐ前を見て、席に座っている。

その時、明るい声が教室に響く。

『なんじゃこりゃ!

何の集会してんのっ!』

その声を合図に視界が開ける。
伏見だ。

伏見は席にかばんを置くと、野並さんの席の前に立った。

『ねぇ、梨央。

あれなに?』

笑いながら野並さんの、前の席に腰掛けた。

野並さんは弾かれたように顔を上げた。

『もも…、』

『あ!今日授業あたし当たる!?

梨央、教えて!』

そう言うと伏見は顔の前で両手を合わせた。

『ごめんなさい…っ』
野並さんは俯き、泣き出した。

それを見た伏見は、優しく笑うと野並さんの頭を撫でた。

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