タイガーハート
エピローグ
『よしこいっ!!』
昼下がりの廊下にこだまする叫び声。
『伏見!覚悟!』
男子生徒が勝ち気に笑う。
『かかってこいやぁー!』
伏見はバットのように箒を掲げたまま叫ぶ。
『…相変わらずやってるね』
目の前の席に座る隼人が、クツクツと喉を鳴らして笑う。
…はぁ。
席を立ち、廊下へ出る。
伏見の背後に立つと、ピッチャーの男子生徒がぎょっとした顔をする。
『んっ?』
伏見が不思議な声を上げて振り返る瞬間。
腰に手を回し、後ろから抱き締める。
『きゃあ!
小虎っ!!』
顔だけで振り返り、小さな悲鳴を上げる。
「おい、ガサツ女。
俺を放置して、男と野球か」
顔を耳元に寄せ、わざといじわるく囁く。
『ごめ…っ
離してぇ…っ!』
くすぐったい、ときゃっきゃと笑う伏見。