俺様御曹司の悩殺プロポーズ
危険な領域
◇◇◇
モーニング・ウインドが始まり、二週間が経過した日の早朝。
私は大あくびをしながら、マンションの駐車場を歩いていた。
それは風原さんの白い車に乗るためで、送ってもらっての出勤が常態化している。
彼は先に来て、運転席で私を待っていた。
後部席に乗り込み、
「おふぁようございまふ」
と挨拶する。
まだしゃっきり目覚めていない私をバックミラー越しに見て、風原さんはこう言った。
「顔が酷いな」
「ぬ?」
それは、奥歯が見えるほどに大口開けて、あくびしたせいかな?
それとも、ブスだと言いたいのか?
後者なら、もう二週間もこの顔を見ているのだから、いい加減に慣れろと言いたいところだ。
ムッとして黒い毛布を頭まで被り、いつものように後部シートに横になって隠れる私。
車が静かに駐車場から走り出ると、風原さんは言葉を付け足した。
「目の下のクマ、花山田に言って、ファンデーションを塗りたくってもらえよ」