俺様御曹司の悩殺プロポーズ
その言葉でやっと“顔が酷い”の意味を理解する。
なんだ。
酷いのは顔の作りじゃなく、目の下のクマさんかと。
納得した後は、毛布の中でボソリと呟いてみる。
「クマが出来るほどに寝不足続きなのは、風原さんのせいなんですけど……」
と。
最低でも6時間の睡眠が欲しいのに、ここのところ4〜5時間しか寝れないでいるのは、
毎晩のように、風原さんの家に通っているせいだ。
色気のある話なんかじゃなくて、厳しいご指導を頂戴しているだけ。
一応アナウンサーを丸二年やり、三年目に入っている私だが、
風原さんに言わせたら、素人同然のど下手くそらしい。
体力作りも兼ねて、3階から25階までを階段で上らされ、
ヘロヘロになったところで、基礎中の基礎、発声練習から始まるのだ。
「らりるれろ、りるれろら、るれろらり、れろらりらりら……あれ?」
「お前……ふざけてんのか?
もう一度、ア行からやり直せ」
「げ……」
大体毎晩こんな具合で、
日によっては、個人レッスンは4時間にも及ぶことがあった。