俺様御曹司の悩殺プロポーズ
ものすごい棒読みで同意しながら、
「何が“たまたま”で“自然な成り行き”なのよ」
と、心で呟いていた。
私を東京に呼んだのも、同じマンションなのも、全て風原さんが企んだことじゃないか。
その理由は、私をおもちゃにして遊ぶために違いない。
本性を隠してイイ顔するから、ストレスが溜まるんじゃないの?
そのはけ口が、私。
私でストレス解消しているのだと思う。
毎晩の厳しいレッスンも、その範疇。
出来損ないの私をビシビシ指導することに、俺様なこの人はきっと、悦を感じているに違いない。
好青年を演じる風原さんは、
「お先に失礼します。
スタジオでは、宜しくお願いします」
と、エコノミストの女性に声をかけ、
彼女とエンタメ担当男性アナに、背を向けた。
この二人は、風原さんの裏の顔を知らない。
知っているのは、私と、私の髪をいじっている花ちゃんだけで……。
クルリと体の向きを変え、私達だけに見せた彼の顔は、
やっぱり裏の顔だった。
風原さんはハンサムな眉間にシワを寄せ、
「余計なこと言ってんじゃねぇよ、ああん?」
と言いたげに、花ちゃんを睨んでいる。
とばっちりで、私まで睨まれてしまった。
「あん、もう、わかったわよ〜」
花ちゃんが、体をくねらせて了承する。
私は急いでコンシーラーを取り出し、クマ消し作業に入り……、
睨む視線から逃げてみた。