俺様御曹司の悩殺プロポーズ
7時50分。
ただ今、三回目のお天気コーナー真っ最中。
私の隣には、折りたたみ傘やマスクなどのお出かけアイテムを張り付けた、日本地図のボード。
その横には、雨雲晴男が立っていた。
初日の噛み噛み事件の後も、彼は何とかクビにならずに済んでいる。
雨雲君が苦手なのは、カメラ前で話すこと。
カメラさえ回っていなければ普通に喋るし、
その内慣れてくれるだろうという、制作サイドの広い御心のお陰だ。
私も異論はない。
あれから彼は急に低姿勢になり、嫌な奴という印象もなくなって、反ってやりやすくなった。
それに、気象予報士としての仕事振りは真面目で、
お天気情報の原稿を書いているのも彼だから。
番組から下ろさない代わりに、みんなで苦手な部分をカバーすれば問題ないと思う。
雨雲君をカバーしながらのお天気コーナーとは、こんな感じで――。
「雨雲君、スギ花粉の飛散は4月下旬までと考えてもいいですか?」
「は、はい。
日野さん、そうですね」
「花粉症の皆さん、あと半月の辛抱です!と言いたいところですが……。
実はスギではなく、ヒノキ花粉のピークが、週明けになるという予報が出ていまして、もうしばらく辛い時期が続きそうです。
雨雲君、ヒノキ花粉の飛散はいつまでですか?」
「ヒノキは、あの、5月下旬までで……です」
「まだ一月以上あるということですね。
お出かけの際には、マスク、メガネ等がまだまだ必要なようです」