俺様御曹司の悩殺プロポーズ
期待の言葉はお預けで
◇◇◇
7月――。
暑い、とにかく暑い。
北海道出身の私には、東京の夏は灼熱地獄に思える。
お天気担当、雨雲君に、
「朝は涼しいから、中継もやりやすいですね」
そう話し掛けられたけど、私には十分に暑いと感じる気温なんですけど。
コンクリートやアスファルトにお日様がギラギラ照り付け、
ムッファ〜とした熱い湿気が、足元から上がってくる。
モーニング・ウインドのお天気コーナーは放送中に三回あり、
お日様の勢いが増した三回目の中継を終えると、もうフラフラで、
すぐに私は、屋内に逃げ込んだ。
暑かった……。
スタジオの外の廊下で、冷たいペットボトルを頬に当てて涼んでいると、
完全遮音のぶ厚い扉が開き、風原さんが出てきた。
スタッフさん達も周囲にいるので、今の彼は表向きの彼。
夏の暑さも吹き飛ぶ、実に爽やかな顔をして、
「日野さん、外中継ご苦労様でした。今日も良かったですよ」
ニッコリ笑って、そうのたまった。
「ありがとうございます」
と答えた時に、
ポケットの中でスマホが震えた。
見ると、今目の前にいる風原さんからのメールで、
《暑いからって、だれてんじゃねぇ》
というお叱りの言葉が書かれていた。