俺様御曹司の悩殺プロポーズ
宿泊セットが詰め込んである大きなバッグを肩に下げ、
長い廊下をとぼとぼと、エレベーターホールに向けて歩いていた。
左側は、桜テレビで放送中のドラマやバラエティー番組の宣伝ポスターが、何枚も貼られている。
右側は、ふた桁の番号がついた控え室のドアがズラリ。
すれ違う見知らぬスタッフさん達に、「お疲れ様です」と挨拶しながら俯いて歩いていると、
通り過ぎようとした37番控え室のドアが突然、勢いよく開いて、
長い腕が私に向けて、ニュッと伸びてきた。
何っ!?と思った瞬間、その腕に捕まえられ、控え室に引きずり込まれた。
ドアが閉められ、鍵をかけられた音が背後にする。
叫ぼうとしたけど、叫ぶことはできなかった。
大きな手が、私の口を塞いでいる。
口だけじゃなく、もう片方の腕が体に回され、
後ろから抱きしめるような形で、誰かが私を拘束していた。
テレビ局でまさかの強漢かと、パニックに陥る私。
長くたくましい腕から逃れるべく、もがいていると、
耳元に聞き覚えのある声がした。
「暴れるな。襲ったりしないから安心しろ。
お前に話があるだけだ」