俺様御曹司の悩殺プロポーズ
 


宿泊セットが詰め込んである大きなバッグを肩に下げ、

長い廊下をとぼとぼと、エレベーターホールに向けて歩いていた。



左側は、桜テレビで放送中のドラマやバラエティー番組の宣伝ポスターが、何枚も貼られている。



右側は、ふた桁の番号がついた控え室のドアがズラリ。



すれ違う見知らぬスタッフさん達に、「お疲れ様です」と挨拶しながら俯いて歩いていると、

通り過ぎようとした37番控え室のドアが突然、勢いよく開いて、

長い腕が私に向けて、ニュッと伸びてきた。



何っ!?と思った瞬間、その腕に捕まえられ、控え室に引きずり込まれた。



ドアが閉められ、鍵をかけられた音が背後にする。



叫ぼうとしたけど、叫ぶことはできなかった。


大きな手が、私の口を塞いでいる。


口だけじゃなく、もう片方の腕が体に回され、

後ろから抱きしめるような形で、誰かが私を拘束していた。



テレビ局でまさかの強漢かと、パニックに陥る私。


長くたくましい腕から逃れるべく、もがいていると、

耳元に聞き覚えのある声がした。



「暴れるな。襲ったりしないから安心しろ。

お前に話があるだけだ」



< 28 / 452 >

この作品をシェア

pagetop