俺様御曹司の悩殺プロポーズ
時刻は15時半になっていた。
腕時計で時刻を確認した風原さんは、
「収録があるから、もう行くぞ」
と私に言う。
「はい。頑張って下さい」
ソファーから立ち上がり、そう返事をした私だけど、
背を向ける彼のジャケットの裾を掴んで、引き止めてしまった。
「何だ?」
「いえ、その、えーと……」
引き止めたことに、これといった理由はなく、
何となく名残惜しいというか、淋しく思ってしまっただけ。
口ごもって俯く私の手を、風原さんが取る。
ポケットから何かを取り出し、それを私の手に握らせた。
手の平には冷たい金属の感触が……。
それは、マンションの鍵だった。
「これって……合鍵?」
「ああ。帰りは19時頃になる。
夕飯、何か作っておいて」
「あ、あの」
「鍵、いらないのか?いらないなら別に……」
「いります!」