俺様御曹司の悩殺プロポーズ
一度くれた合鍵を取られそうになり、慌てて風原さんから離れようとした。
ギュッと鍵を握りしめたまま一歩飛び退くのと、
床に置いてあったごみ箱に足を引っかけ、すってんころりん、床に尻餅をついてしまった。
やってしまったと、赤面する私と、
ブッと吹き出し、大笑いする風原さん。
彼は「足元に気をつけろ」と、手遅れなアドバイスをくれて、
口元を押さえて笑いを殺し、控え室を出て行った。
一人になった控え室は、やけに静かだった。
床に尻餅をついたまま、そっと手を開くと、
彼からもらった合鍵が、銀色に輝いていた。
それを見て、頬を緩ませ照れていた。
「好き」と言ってくれないし、恋人でもない私達。
曖昧な関係なのに、合鍵はくれるんだ……。
夕食も作っておいてと……ん?夕食?
そこで、ハッとして青ざめた。
私、焼きそばやカレーライスくらいしか作れない!
どうしよう!何を作ればいいのかわからない!
立ち上がり、鞄を掴んで控え室を飛び出した。
急いで、初心者向けの料理本を買いに行かないと!
――――……