俺様御曹司の悩殺プロポーズ
淋しいキス
◇◇◇
秋、真っただ中の10月末。
色付き始めた街路樹や、コンビニのおでんののぼりに、近づく冬を意識する。
今日は14時に退社して、食料品店であれこれ必要な物を買い込み、
自宅マンションに帰ってきた。
エレベーターに乗り込んで押したのは、私の部屋3階ではなく、25階のボタン。
まっすぐに風原さんの家に行って、合鍵を使い中に入った。
エプロンを着てキッチンに立ち、買ってきた食材を紙袋から出していく。
じゃがいもを流水で洗いながら、一人、思い出し笑いをしていた。
風原さんと曖昧な関係が始まったのは、およそ二ヶ月前。
まともな料理が作れない私が、初めて彼のために作った料理はビーフシチューで、
それはそれは、悲惨な物になってしまったと……。
一口食べた風原さんは、「マズイ」と正直な感想を口にした。
でも残さず完食してくれて、笑いながらこう言ってくれた。
「そう落ち込むな。こんなものだろうと予想はしていた。
美味い物を作りたいと思うなら、これから練習して上達すればいい。
アナウンサーとしてのお前の成長だけでなく、
俺のために料理の腕が上がっていくのを見るのも、楽しみだな」