俺様御曹司の悩殺プロポーズ
 


その声を聞いた途端、抵抗できなくなった。


やけに聞き心地のよいこの声を、どこかで聞いた覚えがある。



どこで聞いたのかと考えたのは一瞬だけで、すぐに思い出した。



『スクエアニュース・Saturday』や、その他たくさんのテレビ番組で大活躍中の人気アナウンサー、

風原涼の声にそっくりだ。



一度でいいから生声を聞いてみたいと、憧れたあの声がすぐ耳元に。



うそ……。

本人? 本人なの?



驚いて抵抗することを忘れた私の耳に、もう一度、深みのある艶めいた声が忍び込んだ。



「手を離してやるが、叫ぶなよ?

叫ぶと、お前も俺も、立場が危うくなる」



叫ぶことなど、できやしない。


「わかったな……?」

耳に直接吹き込むように念押ししてくるその声が、ゾクゾクするほど素敵すぎた。



なんだろう……。

胸がドキドキして体が熱い。


自分でもよくわからないけど、頬が上気して、

甘い疼きに似た何かが、体の奥から込み上げてくる。



つまり……、

素敵ボイスを直浴びして、こんな状況で“ハウン”となってしまった私。



彼が私の体の拘束を解いたので、支えを失い、

腰砕け状態で、その場にへたりこんでしまった。



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