俺様御曹司の悩殺プロポーズ
 


 ◇◇◇


翌日――。


ベージュの秋物コートを着た私は、気合いを入れて桜テレビ前のお天気中継場所に立っていた。



今日は絶対にノーミスで終わらせる。

雨雲くんにもさっき、そう宣言しておいた。



目の前のモニターには、まだCM中のスタジオの様子が映っていて、

風原さんと佐川さんが、進行表を見ながら何かを話していた。



二人はセットの中央に並んで立っている。


番組開始まで後一分と迫った時……、

風原さんが急に手を伸ばし、佐川さんの顎に指を掛けた。



その様子はまるで、キスする直前の恋人達のよう。


彼女の顔を上向かせ、真面目な顔した風原さんが覗き込んでいた。



それをモニター越しに目撃してしまった私の手から、天気予報の原稿が滑り落ちた。



「日野さん、落ちましたよ?
あっ、風が!」



私が落とした原稿は風で飛ばされ、雨雲くんが走って追いかけてくれた。



それを無視してしまい、モニターに駆け寄りかじりつく。



風原さん、何をやっているの!?


一応私って彼女もどきだと思っていたけど、え?違うの?


それは私の勘違いで、本命はやっぱり佐川さんなの!?



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