俺様御曹司の悩殺プロポーズ
地下歩行空間から早目に出てしまったため、地上を歩く距離が長くなってしまった。
雪でしっとり濡れたコートと、へにゃっとなってしまった前髪を気にしながら、
放送局のアナウンス部に入った。
自分のデスクに向かい、昼からリポートする予定の、地元野球チームの情報を整理する。
するとそこに、早朝のニュース番組を終えたばかりの先輩アナ、里美さんが、隣のデスクに戻ってきた。
「里美さん、お疲れ様です」
そう声をかけると、ニッコリと笑ってくれる。
佐川亜梨沙みたいな華はなくても、里美さんは優しくて仕事も出来る、素敵な女子アナだ。
私もいつか里美さんみたいになりたい。
里美さんがアナウンスしてきたばかりの、今朝のトップニュースについてふたりで話していると、
部長デスクで内線電話が鳴り響いた。
どこかから走って戻ってきた斎藤部長が、息を切らせたまま受話器を取る。
何事かあったようなその様子に、私も里美さんも、会話を中断して斎藤部長に注目した。
「はい、斎藤です。
はい――、はい――。
そうですか……。断ることは不可能ですか。
いえ、まだ本人には伝えていません。
向こうで潰されやしないかと、私は不安でなりませんが……局長でも断れないなら仕方ありませんね。
はい――、はい――」