俺様御曹司の悩殺プロポーズ
斎藤部長のデスクは、机三列離れた位置にあるけれど、
そのただならぬ様子にアナウンス部一同静まり返って見守っていたので、ハッキリと会話は聞こえていた。
「里美さん、何かアクシデントがあったのでしょうか?」
「さぁ、どうかしら?
アクシデントと言うより、誰かの移動の話に思えるけど……」
何があったのだろうと心配しても、それを半分他人事のように聞いていた私。
「わかりました。本人に伝えます。では」
そう言って電話を切った斎藤部長が、振り向いて私に視線を合わせたから驚いた。
まさか……私?
冷や汗が背中を伝って流れ落ちる。
斎藤部長が重そうな足取りで、私の横まで歩いてきて、
溜め息を一つついてから、こう言った。
「春っぺ、また東京の仕事が入った」
や、やっぱり……。
年末特番で視聴率を上げてしまったばっかりに、また行かされる羽目になるとは。
今度は何の特番?
もう、バラエティーも特番も嫌なのに。
二度目のオファーも、また一回限りのバラエティー特番だと思っている私だが……、
今回は、そうじゃなかった。