俺様御曹司の悩殺プロポーズ
風原さんはコンシェルジュから受け取った夕刊や郵便物を、ダイニングテーブルの端にまとめて置く。
それから、手を洗いに洗面所に出て行った。
卓上コンロを点火して、風原さん用のビールをテーブルに置いた私は、ふとテーブルの端に視線を止めた。
気になったのは、まとめて置かれた郵便物の一番上にある、白い封筒だ。
普段は彼の郵便物に触れたりしない私だけど、あれ?と思うことがあったので、それを手にとった。
ひっくり返して、表と裏を見る。
この手紙、差出人が書いていない……。
気になったのは、その一点だけ。
もしかして、風原さんの熱狂的なファンからだろうか?と考えていた。
知らない名前を書けば封を切られずに捨てられる可能性もあるから、わざと名無しでファンレターを投函したとか……。
女の勘が働いて、手にした白い封筒をつい睨んでしまった。
すると背後から長い腕が伸びてきて、手紙を抜き取られてしまった。
「あっ! ごめんなさい!
あの、名前がないなと思って……それだけ気になって……」
彼宛ての郵便物を勝手に触った理由をごにょごにょと説明してみたが、風原さんは怒ったりしなかった。
もしやファンの女性から……?と怪しんでいる私の気持ちにも気づいたみたいで、こう言った。
「住所を勝手に調べて自宅に送りつける奴が、たまにいるんだよな……。
ま、お前が気にするようなことじゃないだろ。
腹減ったから、食事にしよう」
「はい……」