俺様御曹司の悩殺プロポーズ
 


それから十数分後――。


半分夢の中をさ迷っていた意識は、徐々に現実に戻ってきた。



体に心地好い振動を感じる。


辺りは真っ暗で、それは夜だからではなく、

寝そべっている頭から爪先までがすっぽりと、黒い毛布で覆われているせいだ。



薄手の毛布から顔を出し、モゾモゾ起き上がろうとしたら、

風原さんの声がした。



「起きるな。顔も出すな。

到着まで毛布を被って、おとなしく寝ていろ。

マスコミにスクープされたくなければな」



そう言われて、自分がどんな状況に置かれているのかを、やっと理解した。



少し前、彼のフェロモンボイスでハウン!となってしまった私は、

どうやらヘロヘロ状態のまま、車の後部席に乗せられたみたい。



風原さんみたいな売れっ子アナウンサーは、気をつけていないと、雑誌記者の餌食になってしまう。



私と熱愛スクープなんて有り得ないけど、

車に同乗したことで、面白おかしく書き立てられる可能性は否定できない。



それで、車に乗せられた後、頭まですっぽりと黒い毛布で隠されていた……

ということらしい。



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