俺様御曹司の悩殺プロポーズ
25階は、最上階。
階数も一番上なら、値段も一番上。
私の部屋は3階で、確か8階までが賃貸用のグレードの低い部屋だったはず。
それより上は、ひと階ごとに値段が違う、分譲マンションとなっている。
表向きには、金持ち臭を出さないように気をつけているようだけど、
風原さんて、やっぱりお金持ちなんだね……。
ぼーっと突っ立っている私に、コンシェルジュのお姉さんが、
「どうされましたか?」
と声をかけてくる。
「あ、何でもないです」
そう答えると、ニッコリ笑って会釈を返された。
このマンションでコンシェルジュを利用できるのは、分譲で部屋を購入したお金持ちの住人だけ。
彼は「風原様」と名前で呼んでもらえるけど、私は名無しの賃貸さん。
コンシェルジュからは、笑顔と会釈しか返ってこない。
不運にも同じマンションに住んでいることで、身分の違いを更に感じることとなってしまった。
彼は雲の上の住人で、私は平民。
豪華な大理石の壁の向こうに隠された、平民用のアルミ製ポストを開けて、手紙やハガキを取り出す。
色んな疲れを引きずって、部屋に帰るべく、エレベーターに乗り込んだ。
―――……