渇いたKiss
『シン兄帰ってきたの?』
「あぁ、昨日な。んで、久々に腕をふるってくれるってわけよ」
ケンには6歳上の兄・紳悟(シンゴ)がいる。
俺はケンより1歳下だから、俺にしてみれば7歳上の兄貴みたいなもの。
料理人でここ2年フランスに行っていたのだが、昨日帰ってきたらしい。
『じゃぁ着替えてから行くわ』
目の前には“石和”と“鳥海”のプレートが左右に並ぶ。
もちろん俺が入るのは“鳥海”のほう。
無駄にデカイ家に入っても、生活感のかけらも感じられない。
ここに住んでいるのは俺と父親だけだから無理もないのだけど。