ショータロー☆コンプレックス2
「えっ?」


「いやいや、お前が一緒に帰っても意味ねーだろ?瑠美」


その申し出にまたもや浮かれかけたオレだったが、団長にあっけなく阻止される。


「車で送れる訳でもあるまいし。もしコイツが道中倒れたりしても、お前じゃ抱え上げられねーだろ?」


「…周りに助けを求めるくらいできるじゃないですか」


「結局他の誰かの手を借りるんじゃねーか。それが意味ねぇって言ってんの」


団長は前髪をかきあげつつ理路整然と話を進める。


ただ、手グシがすんなり通らず、途中で『ガッ!』と勢いよく引っ掛かかり、すぐに腕を下ろしていたけれど。


「これだけちゃんと受け答えができてんだから、現段階なら一人で帰っても問題ねーよ。そうだろ?正太郎」


「え?あ、ハイ…」


「それに瑠美、お前は正真正銘ウチの看板女優で今回もまた主役なんだから。勝手に抜けられたら稽古が進まなくなっちまって困るんだよ」


「え、えっと、オレ、ほんと一人で大丈夫だから」


団長の言葉により、自分のせいで練習が滞っている事に今さらながらに気付き、慌てて瑠美ちゃんに向けてそう主張した。


「じゃ、申し訳ないですけど、今日は帰りますね。皆さん、お先に~」


次いで団長、他の団員達に順に視線を向けながら別れの挨拶を述べ、「おつかれー」「気を付けて帰ってねー」という言葉を背後に聞きながら部屋を出る。
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