ショータロー☆コンプレックス2
「エキストラで派遣されてるって事は、どこかの劇団に所属している可能性が高い。そんでもってもう本名は分かってるんだから、お前にたどり着くのは大した手間じゃなかったよ」


「い、一体何の用だよ!」


悲鳴を上げておいて今さらだけど、オレは精一杯いきがってそう言葉を吐き出した。


オレの「ツイてないウィーク」の先陣を切った、あの忌まわしい事件の加害者である辻谷。


コイツに付け入る隙を与えてなるものか。


毅然とした態度で接しなければ。


「『何の用だよ』じゃねーだろ」


しかし辻谷はオレの睨みや怒鳴り声などには全く動じている様子はなく、クールにそう言い放ちながら左腕を差し出して来た。


「全治2週間」


「…………は?」


「あん時お前に突き飛ばされて、倒れた拍子に左肘を強打したの。そんで医者に診てもらったら打撲だって診断された。ちなみに、左足の親指の爪の中が内出血してるけど、そっちは自然治癒」


「え!?」


あせりつつ腕を凝視すると、辻谷は羽織っていたカーディガンの袖をまくってみせた。


彼の言葉を裏付けるように、肘付近には厳重に包帯が巻かれていて、動きに合わせて湿布の匂いが漂って来る。


「俺がその気になれば、お前のこと傷害罪で訴える事もできるんだからな」


「えぇっ!」


一瞬にして、全身から血の気が引くのが分かった。
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