モテKingのターゲット
俺らはトイレの入り口から少し離れた柱に寄りかかり、女が出て来るのを待つ。
――――5分経過。
女は未だに出て来ない。
―――――10分経過。
女より後に入って行った年配の女性が先に出て来た。
――――――15分経過。
女よりだいぶ後に入って行った主婦っぽい女性が出て来た。
おかしくないか?
アイツより後に入って行った人が次々に先に出て来るって。
もしかして、腹の調子でも悪いのか?
だとすると、さっきのあの瞳は体調が悪くて、あんな目をしてたって事か?
不審者と思われそうな視線で、女子トイレの入り口をじっと見つめている。
いつの間にか、ケンは彼女と電話中。
楽しそうに話し込んでる。
そんなケンを尻目に、あの女が出て来るのを今か今かと待ち侘びる。
けれど、20分が経過しても女の姿は見えない。
「なぁ、ケン。あの女、腹でも壊してんのかな?」
「……あ?……何分経った?」
「20分」
「マジで?」
「あぁ」
俺の言葉が気になるのか、ケンは彼女との電話を切った。
すると、嫌な予感が脳裏を過る。
――――まさかッ?!