モテKingのターゲット


「先生、あのね?」

「………はい、何でしょう」

「キューッと胸が苦しくなったり、急に顔が火照り出す病気ってどんなのがあるの?」

「そうですねぇ、一概には言えませんね。その時は、どんな状態で症状が出たのですか?」

「…………」


先生が言う『その時』って………。

返答に困り俯いていると。


「少し失礼しますね?」

「………?」


先生は私の手首をそっと手に取り、脈を測り始めた。

そして、瞳孔を覗いたり、口の中を調べて………。


「脈は正常ですし、眼も異常が無いように見受けられます。舌の状態もどこも悪くないですが……」


そう口にした先生は、僅かに口元を緩めて。


「ご自分の胸に耳を傾け、ありのままの自分を受け入れるといいですよ」

「えっ?」

「多分、蘭さんの心の中では既に答えが見えている筈です。ただ、今はそれを認める事が出来ないだけで。そんなに難しい事では無い筈ですよ?」

「………素直になっても、ダメな時だってあるでしょ?」

「そりゃあ、ありますよね。想いのままに全てが上手くいく事の方が少ないですから。それこそ、奇跡だと思えば、心も軽く素直になれるのでは……?」

「…………そうですね」


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