モテKingのターゲット


幾ら弁解しても取りあって貰えなかったし、噂はどんどん広まって。

いつしか『秋月 蘭って誰?』みたいに、自分事に思えなくなっていた。


どこの誰か知らない人の噂だから、私には関係ない。

そう思う事で、精神的に持ち堪えてた。


じゃなかったら、きっと今の私はいないと思う。

何度も何度も『死のう』と考えていたから。



それでも命を絶つ事は出来なかった。

だって、ママを1人には出来ないから。

私がいたから、ママは今日まで頑張って生きて来た。

ママも私と一緒で、何度も『死のう』としたんだって。


いつだったか、志垣さんから聞いた。



志垣さんは、ママのホステス時代の黒服さん。

ママのカリスマ性に惚れ込んで、店を立ち上げる時に自ら直談判しに来たらしい。


『一生、傍にいさせてくれ』って。


これって、プロポーズだよね?

私の目の前では、そんな素振りは見せないけど。

ママもまんざらじゃないみたい。

……志垣さん、カッコイイしね。



そんなストレートに想いを伝える志垣さんに触発されたってのもある。


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