モテKingのターゲット
「ねぇ、シュウくん。シュウくんってばぁッ!!」
「あっ?何か言ったか?」
「もぉっ!私といる時は、他の女の子の事考えないでよっ」
「………あぁ、悪ぃ」
金曜日の放課後。
いつもと変わらず、隣りに女をはべらせている。
でも前ほど楽しくないし、正直、隣りにいる女がうぜぇ。
キーキー甲高い声で嫉妬心を丸出しにして、俺の全てを独占しようとする。
カラダはいいよ?
触れようが抱きつこうが好きにして。
だけど、俺の心まで独占しようとするのは頂けないね。
今日のシンデレラは誰だったっけか?
最近、女の名前が頭に入らない。
と言うより、頭の中にアイツがいる。
今日は金曜日でバイトは休み。
だからなのか、“今は何してるかな?”とか。
“アイツの母親の店に行けば、いるのかな?”とか。
何でこんなにもアイツが気になるんだ?
アイツの涙を見たからか?
女の涙なんて、腐るほど見て来た。
嫉妬に狂う涙や俺の気を惹こうとする嘘の涙。
だけど、アイツの涙はそういう類の涙じゃなくて。
色に例えるなら、限りなく『透明』に近い澄んだ色に見えた。