モテKingのターゲット
俺らは駅構内に足を踏み入れたが、恐らくアイツもここへ来る筈。
蘭の自宅がある駅は、ここから4駅先。
歩いて帰るとは思えない。
駅のホームに着くと、やはり彼女も同じホームのようだ。
俺の視線に気づいた蘭だったが、隣りにいる女に視線を向け、素知らぬ顔で後ろを通り過ぎた。
すると、
「何、あのブーケ!絶対、オヤジからプレゼントされたんだよっ!」
「…………お前、声デカい」
「別にいいじゃんっ!聞こえたって」
「そういう問題じゃねぇよ」
隣りにいる女、ホームの下に突き落としたくなる。
いや、マジでするつもりはないよ?
でもさ、人のことをとやかく言う権利は微塵も無いよね?
それに、根も葉もない噂を大声で口にするって、俺はアンタの常識を疑うよ。
俺は女の言葉を無視して、真っ直ぐと前を向いた。
どうせ、後少しでコイツともおさばらだし。
別れたら速攻で携番削除してやる。
俺らが乗る予定の電車がホームへと入って来た。
ったく、チンタラ走ってねぇで、とっとと来やがれっ!
俺は無性に苛立っていた。
電車に乗り込むと……。