モテKingのターゲット
何だろう。
すげぇ、罪悪感でいっぱいだ。
別に『周さん、助けて』と言われた訳じゃない。
彼女でもなければ、家族でもない。
なのに、すげぇ罪悪感で心が痛い。
今すぐ、駆け寄って助けるか?
でも、あんな顔をさせちゃったじゃねぇか。
何で、気付いた時にすぐ駆け寄ってやらなかったんだよ。
どうして、こんなクソみたいな女を抱き締めて、蘭を見捨てたりしたんだ?
自分のした行動に呆れて物も言えない。
気付くと、蘭が降りる駅に到着していた。
「悪ぃ、俺はここで」
「えっ?!」
俺の言葉に驚く女をよそに俺はホームに降り立って、隣りの車両のドアまで猛ダッシュ。
そして、男に囲まれてる蘭の腕を掴んで、
「ちょっと、邪魔なんですけどっ?!」
連中の隙間から彼女の腕を手繰り寄せ、抱き締めた。
すると、プシューッと静かにドアが閉まる。
「大丈夫か?」
「………」
「おいっ、………蘭?」
彼女の身体は震えていた。
そんな彼女の顎をクイッと持ち上げると、唇をギュッと噛みしめて、大粒の涙がボロボロと零れ落ちる。