モテKingのターゲット


きっと、怖くて何も出来なかったんだろう。

声も出さずに、涙するだけ。


「すぐに助けてやれなくて、悪かったな」

「………っ………」


キッと睨みつけるような鋭い視線を向けて来る。

まぁ、仕方ないよな。

助けられない訳じゃなかったのに、助けなかったのは俺だから。


「泣くなら、声に出して泣けよ。唇が切れるぞ」

「……ッ…………」


尚も鋭い視線を向けたまま、涙が頬を伝って……。

見兼ねて、俺は彼女を抱き締めた。


すると、


「やだっ、離してッ!!」

「泣き止んだらな」

「やだやだっ、今すぐ離してってばっ!!」


俺の肩をバシバシと叩いて抵抗する。

けれど、そんな彼女を更にきつく抱き締めた。


すると、程なくして抵抗を諦めた蘭。

けれど――――。


「何でっ、助けたのよっ!!中途半端な優しさなんて、要らないしっ!頼んだ覚えなんて無いんだからっ!!」


精一杯の強がりを見せた。

そんな彼女の頭を優しく撫でて、


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