モテKingのターゲット


自然と彼女の手を握って歩き出す。

蘭はそんな俺の手を払う事もせず、俺に黙ってついてくる。


「なぁ」

「………はい?」

「その恰好、もうやめねぇ?」

「………何で?」

「どうせ、さっきみたいな事って、今日が初めてじゃねぇんだろ?」

「………」

「俺がいつも居合わせるとは限んねぇし、襲われてからじゃ遅ぇじゃん」

「それって、…………心配してくれてるんですか?」

「当たり前だろっ」

「何で?彼女でも無いのに……」

「…………それは………」


蘭の言葉に返す言葉が見つからない。


知り合いだから?

うちの従業員だから?

本当の俺を知ってる限られた人間だから?


よくわかんねぇ。


蘭が男と一緒にいるのを見ると嫌な気分にはなるが、今すぐキスしたいとか今すぐ抱きたいという衝動には駆られない。

どちらかと言うと、隣りを歩かせて頭を撫でてやりたい。

『いつでも俺が傍にいてやるから、安心しろ』って。


でも、これって………兄っぽくないか?


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