モテKingのターゲット
限界と確かな約束
蘭は、バイト仕様の恰好で学校へも通うようになった。
始めのうちは好奇な目で見られ、噂になるほど目立っていたが。
元々恰好が目立つだけで、素行は至って大人しかった彼女だから、次第に相手にもされなくなった。
そんな感じで月日は流れ、年末年始のイベントシーズンを迎えたうちの店。
世の中の洋菓子店はクリスマスイベントで大忙しだと思うが、意外にもパン屋も忙しい。
うちの店はケーキこそ置いてないが、パーティー用のサンドイッチの盛り合わせやクリスマス仕様のシチューポットパイ、それに手軽に食べられるピザパンが良く売れる。
ご高齢の方には、宅配ピザは食べきれない。
けれど、トーストくらいの大きさなら意外と食べきりサイズで人気なんだ。
定番商品の他に季節商品もあるから、厨房のオーブンスケジュールは目まぐるしい。
厨房には、男3人に煽られるように紅一点の蘭がいる。
親父とリュウさんが『ランちゃん』と呼ぶのに、俺が『蘭』と呼ぶものだから、リュウさんにもからかわれるようになった。
「ったく、いちゃつくなら他所でしろよなぁ」
「もうっ、リュウさん。何度言えば解るんですか!私と周さんは付き合ってませんからっ!!」
「あぁ、ハイハイ。仲のいいご関係で~」