モテKingのターゲット
蘭は少しずつ厨房の仕事を任されるようになった。
最初は焼成前のパンに黄身を塗るような作業から入り、パンのスライス、クリーム系の具の注入等、本当に手軽なものから。
元々生真面目な彼女は、1つ1つの作業を丁寧にこなしてゆく。
スピードも重視される作業が多い中、体力を少しずつつけ、必死に努力している。
そんな姿を親父もリュウさんもちゃんと見ていて、彼女のいない時はその話題で持ちきりだ。
親父にしてみれば、可愛い娘。
リュウさんにしてみれば、可愛い妹。
俺はにしてみれば―――………なんて言ったらいいのか。
クリスマスイブは終業式。
今までなら女とデートをして、その後も……まぁ、それなりに愉しんで来たんだけど。
今年は真っ直ぐ帰宅して、家業の仕事を手伝う事に。
普段でも夕方は忙しいのに、クリスマスという格別のイベントがパン屋を煽る。
リュウさんなんて、常連客のOLさんに『明日の夜は、空いてますか?』なんて聞かれて、有頂天。
仕事人間のリュウさんでも、デートくらいはさせてあげたい。
だから、今日以上に明日は気合を入れて、リュウさんを早めに上がらせてあげないとね。