モテKingのターゲット
翌日、19時30分。
「リュウさんっ!今日はもう上がっていいっすよ」
「あっ、いや、まだ大丈夫だって」
「そんなこと言っていいんすか?初デートで遅刻したら、ムードもへったくれもあったもんじゃないっすよ?」
「マジで?」
真顔で聞き返すリュウさん。
仕事一筋で、うちに勤めるようになってから浮いた話を聞いた事が無い。
もしかしたら、ずーっと彼女がいなかったのかもしれない。
「マジで、遅刻はヤバいっす。それと、一旦家に帰ってシャワーくらい浴びて下さいね?」
「………」
「自分じゃ気付かないかもしれませんが、相当油臭いですから」
「はっ?!」
「なぁ、そうだよな?蘭」
「あっ、はい!!ダッシュで帰って、シャワーした方が無難ですよ」
「って事で、ここは俺らに任せて上がって下さい。なぁ、親父いいよな?後は片付けだけだし」
「おぅ!たまにはお洒落してデートでもして来い。いつも遅くまで無理させて悪いな」
「あっ、いや、それはいいんですけど」
リュウさんは照れながら作業台の上を拭き終わり、
「じゃあ、今日はお言葉に甘えて。すみません、お先に失礼します」
「お疲れ様~」