モテKingのターゲット
俺は、無意識に蘭と距離を取っていた。
せっかく“黒い噂”が消えたのに、俺が蘭と接触する事で別の噂になり兼ねないと思ったから。
出来る事なら、普通の女子高生らしい生活を送らせてやりたかった。
友達を作り、その友達と遊びに行ったりして。
今しか出来ない想い出を沢山作らせてやりたかった。
俺の心は既に兄貴に徹していて、彼女が悪い男に引っ掛からないか、気になって仕方なかった。
「なぁ」
「……はい?」
「今日、何の日か知ってる?」
「……クリスマス、ですよね?」
「あぁ。そんな日にバイトして、その後に女の子を自宅に送り届けてる男に、彼女がいると思うか?」
「…………」
俺の言葉に驚き、目を大きく見開いた。
「いねぇよ」
「………嘘っ」
「嘘なんて吐いてどうすんだよ」
呆れ顔で苦笑すると、蘭はピタッと足を止めた。
「じゃあ、何で今まで黙ってたんですか?」
「………さぁ、何でだろうな」
眉間にしわを寄せる蘭をよそに、俺は再び歩き始めた。