モテKingのターゲット
理由なんて1つしかねぇだろ。
お前の反応が知りたかったんだよ。
多分、俺は距離を取ることで自分の気持ちを確かめ、整理してたんだと思う。
『恋』なんてモノがどういうモノか知らないし。
『好き』という感情がどんな作用をもたらすかなんて想像も出来ない。
だから、自ら自分を試すような事をしてたんだと思う。
だって、俺は……気になった事は自分の目で見て、耳で聞いて、手で触って確かめたい。
出来る限り、自分自身で体感してみない事には納得いかない性格だから。
周りからこうだよとか助言されても信用ならない。
上辺だけの言葉なんて、ごまんとある。
だからこそ、納得いくまでそれを突き詰めていたに過ぎない。
こんな事、本人に言ったら激怒されそうだけどな。
蘭の自宅がある店舗兼住宅のビルに到着した。
蘭が玄関の鍵を開け、中に入るのをいつも見届けている。
だって、メイクをしてなくたって可愛い顔をしてるのに、最近妙に色っぽくなった。
もしかしたら、好きな男が出来たのかもしれない。
玄関ドアを開け、1歩中に入った彼女を見届けて。
「じゃあ、帰るな。おやすみ」
コートの襟を立てて踵を返すと―――。