モテKingのターゲット


蘭は俺に視線を送り、自分の手首の火傷の痕を見るように促して来る。


「この間、オーブンの扉に触れて出来た痕だよ?それに……」

「………あ?」

「ほら、見て?ここなんて、この前また揚げ油で火傷した痕なんだから」


そう口にした蘭は俺に見えるように、ご丁寧にブラウスの襟を大きく広げた。

鎖骨のほんの少し上に、白い肌が薄らと色づいている。

顔を近づけてじっくり見なきゃ、火傷の痕だなんて全く分らない。


ホント、馬鹿だよコイツは。

断ってんのか、誘ってんのか、解ってねぇよ。



「だから?」

「だからっ!!ねっ?!こんな傷だらけの子なんて、気持ち悪くってその気にもならないから!!」

「それって、誰が決めたの?」

「えっ?」

「だから、その気にもならないって、誰が決めたんだよ」

「っ………」


必死に説得しようと試みた筈の言葉もあっさり撥ねつけられて、再び視線を泳がせる。

そんな彼女の身体を問答無用とばかりに、閉じ込めるように両手を着くと。


「そ、それとっ!!」

「あ?」


再び必死に説得しようと視線を送って来た。



< 163 / 168 >

この作品をシェア

pagetop