モテKingのターゲット
「私と付き合ったら、絶対“黒い噂”に巻き込まれるよっ!!」
「はぁ?」
「火傷の痕をオヤジから受けたDVだとか勘違いされて、それで、周さんはそれに巻き込まれてるとか……そういった類の噂に絶対巻き込まれるから!!………ねっ?!」
捲し立てるように口にした蘭は、俺の顔を見て“ね?”と肯定の返答を促して来る。
「火傷の痕で、そこまで飛躍するか?」
「する!!だって、これからも増え続けるんだよ?いつかは噂になるし、今よりもっと傷が増えたら、見るのも嫌でしょ?!」
自分の中では正解だと言わんばかりに、俺に返答を求めている。
…………火傷ねぇ。
そんなもんは、理由にはなんねぇんだって!!
俺はじっと見下ろし、不敵に微笑む。
「説得力に欠けるな」
「なっ?!」
彼女が口にした事はどれも、俺の欲情を削ぐ材料には到底満たない。
むしろ、ここまで拒否されると、闘争心に火が点くってもんだろ。
「他には?……もう無いのか?」
「っ……」
煽る俺の言葉に、肩をビクつかせる蘭。
俺の視線から逃れるように顔を背けた。
すると、ぷっくりと膨れた唇から、蚊の泣くような声が漏れ出した。