モテKingのターゲット
「親父、“ランちゃん”って言わなかったか?」
「ん~?あぁ、バイトの子の名前が『秋月 蘭』って言うんだよ」
「ッ?!………今、秋月………蘭って言った?」
「………あぁ、知り合いか?蘭ちゃんはお前の事、知らないような事言ってたけどな」
おいおい、『秋月 蘭』なんて名前、よくある名前なのか?
俺の知る限りじゃ1人しかいないぞ?
ケンが“科が違う”とは言ってたけど、何科までは聞いてない。
だけど、何となく……聞かなくても分かる気がする。
恐らく、…………同一人物に違いない。
世の中、同姓同名なんてごまんといるだろうけど、同じ高校に通ってるって所がキーポイントだ。
俺は暫し放心状態でいると、
「おい、周っ!次が閊えてるんだから、サッサと手を動かせ!小遣い減らすぞ」
「ッ!………それ、マジ勘弁」
親父の言葉でハッと我に返り、俺は再び手を動かし始めた。
7時40分、駅前でケンを待ちながら思考を巡らす。
バイトの子があの女だとしても、どうしても腑に落ちない点が1つだけあった。