モテKingのターゲット
「悪ぃ、遅くなった」
「シュウくん、ごめんねぇ~」
「凛華さん、おはようございますっ!朝から可愛いっすねぇ」
「フフッ、ありがとうねぇ~」
ケンは凛華さんの車で駅前に来た。
朝の駅前ロータリーは混雑する為、社交辞令の挨拶もそこそこに、俺らは改札を抜けた。
「凛華さん家に泊まったんなら、わざわざ駅に来なくても良かったのに」
「朝から変な気使うな。うぜぇよ」
「全く、ケンくんは素直じゃないんだから~」
ケンは、満員電車で俺が痴女に遭遇するのを気遣ってくれたようだ。
凜華さんの自宅は、学校を挿んで向こう側にある。
だから、凜華さんの家から学校を通り越してこの駅に来るのは、冷静に考えると有り得ない。
これが、ケンの優しさ以外何物でもない証拠だ。
俺らはからかい合いながら構内の階段を駆け上がった。
ホームに到着した俺ら。
他にも学生は大勢いる。
勿論、俺らをチラチラ見ている視線も感じながら……。
「あっ、そう言えばさぁ、噂の女って食品工業科?」
「あ?……何だよ、急に。それにお前から女の話が出て来るのも珍しいな。ってか、またあの女の話っ?!」