モテKingのターゲット
「なぁ、ここって………」
ケンが言い淀んだのも無理はない。
俺らが歩いているのは、キャバクラや風俗の店が立ち並ぶ通りだ。
女には幾つもの顔があるとよく聞く。
でもそれは、その人自身のもつ性質の顔であって、実際の風貌とは違う事くらい俺だって解る。
だが、俺の視界にいるあの女には、確かに幾つもの顔があるようだ。
駅から暫く歩くと、女は『CLUB 泉』と書かれた店に入って行った。
「おいっ、入って行ったぞ?この後、どうする?」
「…………」
俺は女が入って行ったドアをじっと見据え、思考を巡らす。
現在の時刻、16時10分。
目の前の店が開店してるとは思えない。
もしかして、これからこの店で働くのでは?とも事も考えたが、腑に落ちない点が浮かび上がる。
「なぁ、おかしくないか?」
「何が?」
「まだ日も高い時間帯なのに、高校の制服を着た姿で堂々と出入りするのは……どうかと思うんだが」
「言われてみれば、そうだな」