モテKingのターゲット
モワッとした空気が余計に苛立ちを助長させる。
俺は睨みつけるように『CLUB 泉』を見据えていると。
「んッ?!」
「………誰だ?………あの男」
ケンの口走った『男』という人物。
年齢は40~50歳といった所だろうか?
スラリとした長身で顔立ちもキリッとしていて、オヤジ臭さがあまりない。
うちの親父とは正反対のタイプだ。
白いYシャツの袖を折り曲げ、黒いスラックスのズボンが妙に似合う。
しかも、女と仲良さそうに肩を並べて歩いている。
――――あの男は誰だ?
店の従業員なのか、女の客なのか、それさえも分からない。
だた言える事は、2人は結構親しい間柄だという事。
男が女の事を『蘭』と呼び捨てにしているのが耳に届いた。
俺らはさっきよりも少し距離を取って、2人の後を追った。
2人が向かったのは、繁華街の中にあるスーパー。
そこで、野菜やラップなどをカゴに入れ始めた。
もしかして、女の恋人か?
養護教諭はどうした?
俺の中で、女に対してますます靄がかかってゆく。