モテKingのターゲット
「おっ、倉田だな」
「だよな」
「何で、アイツがいんの?」
「あっ……」
ケンには保健室での密会の様子を話していない。
別に秘密にしてあげようとか、そういう感情からじゃない。
ただ、自ら噂をバラ撒くみたいな真似はしたくなかったからで。
結果的にそれが、2人の秘密を守るような事になっていたのも事実。
俺らの視線の先にいる倉田先生は店には入らず、車の横に立っている。
まるで、誰かを待っているように。
恐らく………。
俺は次のアクションが起こるまでの間に、先日の2人の様子を掻い摘んでケンに話した。
ケンは驚く素振りを見せつつも、どこか納得してるような……そんな表情。
例え噂だとしても、黒い噂の存在自体を知っているからかもしれない。
ちょうどケンに話し終えると、店から数人出て来た。
1人は見知った人物―――――あの女・秋月蘭だ。
そして、女の隣りにいるのは………この店のママ、なのか?
着物姿の中年の女性が倉田先生に話し掛けてる。
その表情は至って柔らかい感じだ。