モテKingのターゲット
――――パチーンッ!!
俺の左頬に鋭い痛みが走った。
「私の何が気になるのか知りませんが、プライベートな事まで踏み込むのは止めて下さいっ!」
俺を真っ直ぐ見据える瞳は涙で揺れていた。
やり場のない怒りと、そして、悲しい感情を滲ませたそんな瞳。
平手打ちをくらった俺は、暫し放心状態に陥っていた。
この俺の綺麗な顔に平手打ち?
マジかよ、しかも………女だよ!
ありえねぇ。
身支度チェック用の姿見に映る俺の頬は、薄らと赤くなっていた。
次第にジンジンと熱が帯びてゆく。
冷静に話し合いをするつもりだったのに、何この仕打ち。
目の前のコイツが『男』だったら、速攻で殴り返してる。
クソッ! 女だから殴れねぇ。
どんな理由があろうとも、俺は女には手を上げないと決めている。
マジでムカつく、この女。
「今のを謝るつもりはありません。仕事があるので、これで失礼します!!」
手洗いを終えた女は、一礼して店舗内へと入って行った。