モテKingのターゲット
“秋月 蘭”という女。
近くで見ると、より一層美人なのが分かった。
肌は透き通るように白く、くるんと巻かれた長い睫毛の下の瞳は黒目がちでくりっとしている。
ぷっくりした唇はグロスで艶めいていて、男がキスしたくなる唇だ。
ホームにいた時は長い髪で隠れていて分からなかったが、胸も結構あるようだ。
セーターの胸元のシルエットがそれを物語っている。
見るからに俺の好みなのに、何だろう?
違和感を覚えるのは……。
ケン同様、流れる景色を眺める女。
その瞳は………まるで死んでいるように見えた。
愛らしく微笑んだり、色っぽい視線を送れば完璧なのに。
何だろう……? すげぇ気になる。
何であんな瞳をしてんだ?
俺はここぞとばかりに見据えていると、
「あっ……」
俺の視線に気づいたのか、女と視線がバチッと絡まる。
けれど、じっと見据えるだけで、微笑む事も笑う事もせず。
俺の心を見透かすように真っ直ぐと向けられた視線。
俺はすかさず、似非王子スマイルを送り返すと――――