モテKingのターゲット


だから、そんな夢でもある『パン職人』の道を邪魔されたくない。

やっとの想いで製造スタッフ募集のバイトを見つけたのに。


しかも、そのお店の勤務条件が『ノーメイク』。

それを見た時、運命だと思った。


普段の私と正反対の私。

どっちが本当の私か?なんて、明らか。


職場のスタッフも優しくて、時給も結構いい。

自宅から少し離れてるけど、通えない距離じゃない。


夢を実現するために、やっと1歩踏み出したのに……。



そんな素敵なお店の息子さんが彼だなんて。

ホント、どこで地獄に通じてるのか分からない。



「なぁ、どうなんだよ」

「それ聞いて、どうするんです?」

「あ?」

「噂を広めてくれるんですか?それとも、俺もヨロシク的な流れになります?」


こういう質問にも慣れている。

だって、視線が合えば『今夜どう?』なんて声を掛けてくる奴らばかり。


真面に相手する方が大変だ。

私はフッと鼻で笑うと、


< 70 / 168 >

この作品をシェア

pagetop