モテKingのターゲット
だから、そんな夢でもある『パン職人』の道を邪魔されたくない。
やっとの想いで製造スタッフ募集のバイトを見つけたのに。
しかも、そのお店の勤務条件が『ノーメイク』。
それを見た時、運命だと思った。
普段の私と正反対の私。
どっちが本当の私か?なんて、明らか。
職場のスタッフも優しくて、時給も結構いい。
自宅から少し離れてるけど、通えない距離じゃない。
夢を実現するために、やっと1歩踏み出したのに……。
そんな素敵なお店の息子さんが彼だなんて。
ホント、どこで地獄に通じてるのか分からない。
「なぁ、どうなんだよ」
「それ聞いて、どうするんです?」
「あ?」
「噂を広めてくれるんですか?それとも、俺もヨロシク的な流れになります?」
こういう質問にも慣れている。
だって、視線が合えば『今夜どう?』なんて声を掛けてくる奴らばかり。
真面に相手する方が大変だ。
私はフッと鼻で笑うと、